冬の日の読書に。おすすめの小説

こんにちは、陽が短くなり、いよいよ本格的な冬の到来を感じます。ハートフル・ステイションの周辺には美しい田園風景が広がっていて、すすきが川沿いに実り、風に揺られています。温かな室内で過ごすことの増える冬には読書がおすすめです。今日は冬の読書におすすめの名著三冊をご紹介します。

・「虹の谷の五月」船戸与一


「あらすじ」
トシオ・マナハン、14歳。セブ島で祖父とふたりで闘鶏用の軍鶏を育てている。ゲリラのホセ・マンガハスが住む「虹の谷」への道を知っていたことから暗殺、誘拐の硝煙の宴に巻きこまれていく。少年の夢。怒りと誇り。愛する者との別れ。慟哭の叫びを胸奥に沈め、少年は男へと脱皮して行く。第三世界の片隅から世界を睥睨(へいげい)する冒険小説、感動の巨編。直木賞受賞作。

アウトローなキャラクター達の壮大な冒険小説で名を馳せた船戸与一の直木賞受賞作。上下巻構成で、13歳の少年が反政府ゲリラ戦士たちの戦いに巻き込まれ、少年から男へと見事に成長する姿を活写した名作です。船戸与一はよく主人公がいくつもの死線をくぐる中で成長する姿を描くのですが、この作品は少年が主人公ということもあって濃密な成長過程の醍醐味が楽しめます。戦争も関わる小説なので、非常に残酷な描写もありますので苦手な方はご注意を。

・「TSUGUMI」吉本ばなな

「あらすじ」
病弱で生意気な美少女つぐみ。彼女と育った海辺の小さな町へ帰省した夏、まだ淡い夜のはじまりに、つぐみと私は、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出会った―。少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。第2回山本周五郎賞受賞。

村上春樹と並んで世界でもっとも売れている日本人作家と言われる、吉本ばななの名作です。本作の魅力はなんといっても主人公の親友、ヒロインつぐみの魅力そのものと言って良いと思います。見たことがないほど破天荒で、口が悪いつぐみは、ただ笑顔になるだけで許されるような、どこか憎めないキャラクターです。一見、破天荒なヒロインは病弱で、常に死と背中合わせに生きている。切ない人物を作者は見事に描き出します。死と対局にある美しいつぐみの生とのコントラスト、そして吉本ばなな独自の幻想的な世界観が美しい。万人受けするおすすめの作品です。

・「スコーレNo.4」宮下奈都

「あらすじ」
自由奔放な妹・七葉に比べて自分は平凡だと思っている女の子・津川麻子。そんな彼女も、中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレ(学校)と出会い、少女から女性へ変わっていく。そして、彼女が遅まきながらやっと気づいた自分のいちばん大切なものとは……。ひとりの女性が悩み苦しみながらも成長する姿を淡く切なく美しく描きあげた秀作。

丁寧で瑞々しい文体が印象的な良作。作者の宮下奈都さんは映画化された「羊と鋼の森」の原作者でもあります。近頃、急速に人気が出てきた気鋭の作家さんです。宮下さんが小説家としてデビューしたのは結婚して三児を産まれた後の37歳という、やや遅めと言われる年齢でした。宮下さんがキャラクターに向ける目は、三児の母として成熟した女性ならではの厳しさと優しさの同居する、暖かなものです。スコーレNo.4では、4つの学び舎での四人の男性との出会いが描かれます。自分のことを地味だと思い、自信を持てずにいた少女が、四人の学び舎を通じて、確かな大人の女性として成長していきます。読後感が素晴らしく、しばらく爽やかな余韻から抜け出せない程です。

今回はこの三冊の紹介とさせていただきます。私はよく新しい小説を買い、旅先で読むのですが、感性が高ぶっている中で開く読書は、また格別の喜びがありますので、おすすめです。宿泊する旅館やコテージなどの非日常の雰囲気と、小説の中の雰囲気とがブレンドされて、とても幻想的な気持ちになれますよ。